頂き物小説
                       (作者・yue様)

yueさん有難うございましたvv
もう何度読んでもいい感じです!!!
後半部分なんか何度も読み返しちゃいました(^^)
全国のダグエリスト様!!!ゼヒゼヒ読みましょうっ。読んでいるとココロがほわわ〜んとなってきますv
こういうダグエリ小説ってメチャ好きデス!!!甘すぎずクールすぎず・・・。

  


「こんにちわ〜」
 エルフィールが入ってきたのは飛翔亭だった。ここは依頼を受ける場所。今日は依頼品を届
けに来たのだ。
 マスターのディオがいらっしゃいと声をかける。
「依頼の品ができたんで持って来ました〜」
「おう、ちょっと見せてもらうぜ」
 依頼の品を評価する。それは、エルフィールの実力を確かめる、ということなのだが。
 ディオはにこっと笑った。
「ん、腕を上げたな!ほらよ、報酬だ。出来もいいし期限も余裕だから上乗せしとくよ」
「わ、ありがとうごさいますっ」
 ほめられて報酬もたくさんもらえてエルフィールはうれしそうに笑った。
「あ、それで、これ、いつも依頼してくれるので、お礼に・・・ワイン作ってみたんですけど・・・試
飲してもらえますか?」
「依頼受けながら研究も怠らないとは成長したなぁ。どれ、質が良かったら店で取り扱ってやる
よ」
 赤く透き通ったワイン。それにはまだ名前がつけられてなかったが、グラスにそそぎ、ディオ
がテイスティングする。
 色、香り、透明度や味、後味、のどごし、などなど・・・。
「ど、どうですか?」
 初の試みだったワインは少し不安だった。何回か失敗して、やっと成功するようになって、そ
の中で一番いいできのものを持ってきた。自分としては、よくできたと思うのだが、こればかり
は他の人に確かめてもらわないといけない。
「ん〜・・・悪くないね」
 ディオの表情は穏やかなものだった。品質に対しては厳しい彼が悪い品質の表情を見せな
いことにエルフィールは少し安心した。ディオが満足するところまでまだいっていないワインの
品質はエルフィールもわかっていたので、悪くない、という言葉にも納得できた。なにより悪い
品質ではないということが嬉しかった。
「まだ作り始めたばかりなので・・・」
「最初にしてはよくできてるよ」
「参考までに、感想聞かせてください」
「そうだな・・・ちょっと甘すぎる・・・もう少し酸味があってもいいぞ。色はすごくいい。透明度もい
いが・・・香りが少し弱い気がする・・・ぶどうはいいやつを使ってるから、もう一工夫だな。これ
はこれでうまいからもらっていいか?」
「あ、はいっそんなので良ければいいでよ。またなにか気づいたら教えていただきたいし」
「んじゃこれこのワイン代な」
 と、銀貨を数枚取り出す。
「ええっ?い、いいですよ、そんなのっ」
「いや、これはこれでいいもんだ。それにお前さんの成長もよくわかるからな。買い取りたい」
「ん〜・・・あ、じゃあ、このお店で取り扱えるくらいいいものになった時に、その銀貨受け取りま
す。今はまだもらえません」
「わかった。じゃあ、楽しみにしてるよ」
「はいっ」
「ついでに依頼していいか?」
「え〜と・・・今受けてる依頼がいくつかあって・・・なにがいります?」
「ああ、忙しいんならいいよ。前はいつでもなんでも受けてくれたのになぁ」
 少しからかい半分でディオがとても残念そうに言う。
「ダグラスがスケジュール考えずになんでもかんでも依頼受けるなって言うんですよ・・・」
「ほ〜う、ダグラスがねぇ」
 はっとエルフィールが気づく。ディオがにやにやしていて、エルフィールは顔を真っ赤にした。
「ででで、でもっ今すぐのものじゃなければできますよっ」
「ああ、期限は一週間でいいんだが」
 ディオが依頼書をエルフィールに見せる。
 その中から今のスケジュールと合わせて一週間以内にできる依頼品を選ぶ。
「え〜と・・・あ、全部できますよ。種類も数も少ないし、いくつか在庫もありますから」
「そうかい。無理になったら早めに連絡してくれればいいから、頼んだよ」
「はいっ」
 依頼書を受け取ってエルフィールは次の依頼人のところへ品を届けにいった。その帰りに買
い物をして、城門の前を通る。そこでダグラスと会うというのが日常だったのだが・・・。
 まだお昼の休憩時間にはほど遠い。この時間ならダグラスに会える。ディオとのやりとりもあ
って陽気なエルフィールは早くこの話がしたくて浮き足だっていた。
 しかし。
「・・・あれ?」
 少し離れたところから城門が見えた。人影が一つ。ダグラスかと思ったが、常日頃ダグラスを
見ているエルフィールは遠くからでもそれがダグラスなのかそうではないのかはわかるようにな
った。そして今日城門に立っていたのは。
「・・・あの、エンデルク様?」
 目の前にゆっくり近づいてきた少女に王宮聖騎士隊長は厳しい顔つきをほんの少しだけ柔ら
かいものへと変えた。
「エルフィールではないか。・・・ダグラスなら今日は休みだが?」
 二人が恋人同士ではないにしろ仲の良いことをしっているエンデルクはエルフィールが探して
いるであろう人物の名をあげた。
 とたん、エルフィールの顔が赤くなる。可愛いものだな、とエンデルクは少し笑った。
「え、えと・・・休みなんですね、わかりました・・・」
「休みと言っても非番ではないがな」
 つまり、それはどういうことかというと。
「珍しく風邪を引いたそうだまだまだ鍛えが足りん・・・といいたいところだが、最近仕事が増え
て疲労もたまっているだろうからな、そこまで厳しいことは言えんが」
「風邪、ですか・・・」
 確かに珍しい。ここに来てもう4年たつが、ダグラスと知り合ってから彼が風邪を引いて、しか
も休むなどというのは初耳だ。そんなに忙しいのにいつも工房に来て様子を見に来てくれたん
だな、とエルフィールは嬉しくなる。が、ダグラスが風邪と聞けばやはり心配だ。
「そうだ、エルフィール、風邪に良くきく薬はないか?」
「風邪薬、ですか・・・作れますけど在庫が・・・あ、でもすぐ作れますっ私作ってダグラスのお見
舞いに行きますっ」
「そうしてくれるとありがたい。いつも門番をさせてはいるがあれはあれで有望な人材だ。最近
は忙しくて人手がほしいのでな・・・頼まれてくれるか?」
「はいっエンデルク様の命令ですからっ」
 命令じゃなくてもその気は十分あるはずなのに、素直ではないな、とエンデルクは心中で笑
う。もちろん顔には出さない。きりっとした表情を保ったままエンデルクは頼む、と走って工房に
戻るエルフィールの姿を見つめていた。
 互いに好き合っていると周りは知っているのにあれでまだ恋人名関係になっていないという
のだから不思議である。だが鈍感でオクテな二人。いたしかたあるまい。





 運良く材料はそろっていた。
 なにを慌てて調合しているのか首をかしげる妖精たちを背に、エルフィールは説明をする余
裕すらなく熱中する。
 エリキシルほどではないけれど、かなり効力の高い風邪薬を数時間で作り上げたエルフィー
ルはかごに薬とちょっとした食材をかごに詰め込んで工房を飛び出した。
 一度だけしか行ったことのないダグラスの部屋。一応王宮内に部屋があるのだが、王宮内だ
と息苦しいというダグラスは城の近くにある寮に住んでいる。騎士用の寮とは違い、聖騎士用
の寮は造りも立派で室内も充実している。寮とは思えない快適さだ。
 ダグラス・マクレインと書かれた表札の前にエルフィールはいた。ずっと走ってきたためにカタ
は大きく上下していた。はぁ、と深呼吸して荒い呼吸と動悸を整えて、今寝てるかなと思いなが
らドアをノックする。が、返事はない。寝ているのだろうか。
 もう一度ノックしてみる。これでなんの反応もなかったら寝ていると判断して帰ろうとするが、
足音が聞こえた。あ、起きてるのかな、よかったと思いながらエルフィールはドアが開くのを待
った。
 バァン、と荒々しい音とともにドアが開いて、そこにダグラスがいた。
 だが。 
「いい加減にしろ!気分悪いんだよ!余計体調崩すようなことするな!・・・って・・・え・・・エルフ
ィール・・・?」
 突然のダグラスの恐い顔と怒声。エルフィールは手にしていた荷物を落としてしまった。恐い
とか、なんでそんなこと言われなきゃいけないのとか・・・悲しくて涙がこぼれた。
 ノックがうるさかったのかな、そんなに気分が悪かったのかなと自分を責めて、ぽろぽろ涙を
こぼす。いつもなら怒っていただろう。しかし、拒絶されたことが一番悲しかった。
 泣き出したエルフィールを前にあわてるダグラス。
「わ、悪いっ・・・違うんだ、これは・・・っ」
 ダグラスとて理由はあった。だが、泣いているエルフィールの前でどう説明するばいいのかか
わらなくなってしまう。熱に思考回路は役に立たず、なぜここにエルフィールがいるのか・・・疑
問と後悔がぐるぐる回って考えも言葉もまとまらない。
「ごめ・・・んなさい・・・」
 荷物を落としたままエルフィールはやっと一言言うと走っていってしまった。
「エルフィール!!」
 追いかけたかった。だが、体が思うように動けなくて走れない。置き去りにされた荷物を取っ
て、風邪薬と食事の材料を見つめる。自分を看病しに来たのだと気づいて、ダグラスは拳に力
をこめた。




 工房に走りながら入ってきたエルフィールは扉をしめるとそのまま扉を背にもたれさせながら
座り込んでしまう。
 怒鳴った時のダグラスは恐かった。今まで何度もドジをして怒られた時よりももっと・・・拒絶を
感じた。自分がなにかしただろうか。看病が余計だったのだろうか・・・それだけでこんなに悲し
くて怒りよりも強く悲しみが出でくるなんて・・・。
「あ、おねえさんお帰りなさい〜」
 奥の部屋から妖精のポッキーとフランが出てきた。今はこの二人とあと一人、今は採取に行
っているトッポの三人が手伝ってくれている。
 エルフィールは慌てて涙を拭いて立ち上がった。
「ただいまっトッポはまだ帰ってきてないんだね」
「うん。僕たち依頼品の下準備してたんだよ〜」
「ありがと。じゃあ、作ろうか。ディオさんからも依頼もらったし。作りおきしてあるものだけ出し
てくるね」
 エルフィールはなにごともなかったかのように倉庫に行き、ディオからの依頼品を持って妖精
たちのもとに戻るとそれを依頼品の棚に置いておく。あとはそれ以外の頼まれたものとほかの
人たちに頼まれたものを作るだけだ。一応材料はそろっているため調合は順調に進んだ。妖
精たちが下準備をしていてくれたおかげで調合ははかどった。途中失敗もしたが、その分品質
の良いものができた。あとは遠心分離機にかけておくだけ。一晩寝かせておくものも窓際に置
いておく。
「よし、今日はこのくらいでいいかな。ディオさんの依頼品は、あと三つ・・・んでこっちは全部で
きて、あとミスティカティが二つと・・・チーズケーキが一つ・・・期限はまだあるから、大丈夫、と」
「おねえさん、チーズケーキのカステラなら僕作っておいたよ」
 と、スケジュールを確かめるエルフィールの足元でポッキーが言う。
「試食してみてよ」
 なんどかチーズケーキ作りを手伝っているポッキーだったが、一人でカステラを作るのは初
めてだったので、質に自信がないらしい。エルフィールは差し出されたカステラの一部を試食し
てみた。
「・・・うん、おいしいよっ」
「ほんと!?」
 嬉しそうに声をあげるポッキー。
「もう少し甘味がほしいかな・・・でも大丈夫。あとの調合で調節できるから、このカステラ自体
はいいものだよ」
 厳しいながらもポッキーを誉めるエルフィール今度こそエルフィールが満足するカステラを作
るぞっと意気込むポッキーであった。




 その夜。エルフィールの工房にアイゼルが訪れた。
「エルフィール、私よ。ちっょといいかしら」
「こんな時間に珍しいね・・・どうしたの?」
 こんな時間に人がくること自体珍しかったが、訪問者がお嬢様なアイゼルだったことがさらに
珍しかった。
「やあ、エルフィール」
 その後ろからノルディスが。なるほど、護衛というわけか。でなければこんな時間にアイゼル
が出歩くわけがない。
「ノルディスも?なにかあったの?」
「あなた、あの万年門番男となにかあったの?」
「え?ダグラスと?」
 なにかあったと言われれば、昼間のあのことぐらい・・・。でもなぜアイゼルがそんなことを聞
いてくるのだろう?そう思っていたら、ノルディスがすべてを言わずとりあえず、と声をかけた。
「ダグラスの部屋に行ってみるとわかるよ。アイゼル送りがてらダグラスのとこまで送るから、
行こう」
 女の子に夜道を歩かせるのは危険とばかりにノルディスはアイゼルを家へ返すと同時にエル
フィールをダグラスの部屋まで送っていった。
 なにがあるのかと聞いても二人は教えてくれなかった。行けばわかる。ただそれだけしか言
ってくれない。
 騎士の寮の外壁の前でノルディスはじゃあ、とエルフィールと別れた。あくまでエルフィール一
人に行かせるつもりらしい。門をくぐってダグラスの部屋に向かう。他の部屋はほとんど明かり
がついていた。騎士たちはまだ起きているらしい。いつも朝早いのにタフだなぁと思いながらエ
ルフィールはゆっくり進む。なんだか気がのらない。昼間あんなふうに言われて泣いて帰った
自分。ダグラスには会いたい。けれど、あんな風に言われては気分が悪いのに会いに行くなん
てできない。でも、ここまで来てしまったからには・・・。
 本日二度目の訪問。
 ダグラスの部屋の前に着いた。部屋の明かりは小さいのがついているだけ。
 ドアの前に立ったエルフィールの目が見開かれた。
「・・・え?」
 ダグラス・マクレインの表札の下に一枚の張り紙。
『エルフィール・トラウム以外立ち入り禁止』
 そう書かれていた。
 どういうこと?
 自分以外が立ち入り禁止、ということは、自分しか入ってはいけない、ということなのだろう
か?
「・・・だ、ダグラス・・・?」
 小さくノックして昼間のことを思い出して、気が弱くなっていたエルフィールから出てきた声は
ほんとに小さなもので、ドアをこえて部屋の中まで聞こえるか不安だった。
 応答はない。聞こえてないのだろうか。
 しかし、しばらくしてドアの向こうからダグラスの声が聞こえてきた。
「・・・入っていいぜ・・・」
 低く、小さな声。なんだかまだ怒っているように思えてエルフィールは不安にかられた。それで
も、入っていいと言われたのだから、ゆっくりドアを開けて中に入る。
 騎士の寮の部屋は一人暮らしというより二人で暮らせるくらいの広さだった。王宮の部屋とな
るともっと広いというから驚きである。
 ダグラスはベッドの中にいた。
「来てくれないかと思ったぜ・・・」
 エルフィールを見つけて、ふ、と笑うダグラス。しかしまだつらそうで、息は荒く顔は上気してい
た。
 まだ熱があるのかとエルフィールは思う。そして、今度は拒絶されてないのを知って泣きなが
ら笑った。
「な、なんで泣くんだよ・・・っ」
「だっ・・・だって・・・恐かったんだもんっ・・・」
 ベッドのそばに座り込んで顔を隠すように顔をベッドにすりつけるエルフィール。
「昼間は・・・悪かったよ・・・」
 ぽつり、ダグラスが口を開いた。
「俺が風邪引いて寝込んでるって話聞いて女官とか、ファンだとかいう女が何人か来て・・・うる
さくてよ・・・メシはまずいし・・・看病しにきたとは思えねぇ態度で苛立ってたんだ・・・お前が来た
のは、そいつら追い返した後で・・・また来たのかと思って・・・だから、お前に言ったわけじゃな
いんだ・・・悪い・・・」
「・・・私は、いてもいいの・・・?」
 顔をあげたエルフィールと目が合う。
「ああ・・・」
 顔が赤いのは熱のせいか、それとも照れているのか・・・。
「よかった・・・あ、そういえば荷物・・・」
「これか?」
 ベッドのかたわらにおいておいた籠。
「あ、うん。風邪薬飲んだ?」
「いや、まだだけど・・・」
 エルフィールは籠からから風邪薬の入った小瓶を取り出した。自分が作ったのだとダグラス
に自慢げに見せる。
「すっごくよく効くんだよ。・・・飲める?」
「ああ・・・っ」
 起き上がろうとして、でも無理だった。昼間の女たちの件もあって必要以上に体力を消耗し、
風邪の症状もひどくなっていたのだ。
「えと・・・どうしよ・・・」
「それ全部飲むのか?」
「ううん、一口で十分だよ・・・あ、スプーン借りるねっ」
 そう言って、エルフィールはキッチンからスプーンを持ってきた。それに風邪薬を注ぎダグラ
スの口に流す。
「これだと量少ないからもう一杯ね」
 もう一度風邪薬を飲ませて、エルフィールはほ、と一安心した。
「おなかはへってない?」
「減ってる・・・朝から何も食ってねぇ・・・あいつらのは食いたくなかったし」
「んじゃ軽く食べれるもの作るから・・・固形物はつらいかな・・・」
「お前が作るもんならなんでもいい・・・」
「んじゃちょっと待ってて」
 なんだかいつもより少し素直なダグラスの言葉が嬉しくてエルフィールは笑う。
 キッチンから音が聞こえる。それは耳障りなものではなくて、心地よい・・・。
 栄養たっぷりの具沢山スープを綺麗にたいらげたダグラスはそのまま眠ってしまった。
 たくさん話したいことがあったけれど、今は仕方がない。話すのは、いつでもできるよね、とだ
いぶ落ち着いた表情で眠るダグラスを見つめる。
 でも、すぐに熱は下がらないようで、呼吸はまだ少し荒かった。
 濡らした布を額にのせて、それを何度か繰り返す。
「そろそろ帰らないとね・・・」
 まだちょっと心配だけど、明日には元気になっているはずだ。また会いに来よう、とエルフィー
ルは立ち上がる。
 キッチンの片づけをして帰り支度を済ませたエルフィールは、帰る前にもう一度額の布を濡ら
そうとして手を伸ばした。
 途端、ダグラスに手を掴まれ、引き寄せられる。
「わわっ」
 バランスを崩してベッドに突っ伏した。
 ねぼけていろのだろうか。
 ダグラスの大きな手。力強い、剣を握る手。
「ダグラス・・・帰るから、離して・・・っきゃっ・・・」
 寝ているとわかっていても話し掛けてしまうが、強く引っ張られ、ダグラスの胸の上にのってし
まう。すると、ダグラスの手が離れ、背中や腰に回された。
「ダグラス?は、離して・・・っ」
 体をねじって、腕の中から逃れようとする。しかし、いっこうに腕の力は緩まない。 
 聞こえてくるのは、規則正しい寝息。たぬき寝入りではなく、本当に寝ていた。
 そのままでいると今度は抱きしめられたまま体が回転し、横向きになってさらに強く抱きしめ
られる。
 ダグラスの腕の中、エルフィールはどきどきしていた。
 いつも守ってくれる腕の中はとても安心できた。熱がある分あったかくて。
 ああ、守られてるんだな、と実感した。
「ダグラス・・・」
 呼べばさらに抱きしめられる。寝ながらも力加減はしているのか、それほどきつくはない。
「エリー・・・愛してる・・・」
「・・・っ」
「エリー・・・」
 寝言で自分の名前を呼ぶ人。
 エルフィールはそっと呟いた。
「私も・・・」
 ・・・大好きだよ・・・



 翌朝、日の出とともに目を覚ましたダグラスは隣で、しかも自分の腕の中でエルフィールが寝
ていることに驚愕した。
「な、ななななんでこいつが・・・!?」
「ん〜・・・・・・あ、ダグラスおはよう・・・もう大丈夫?」
 驚いているダグラスに対していつもののんびるエルフィール。 
「大丈夫だけどよ、なんでお前がここにいるんだ・・・っ」
「だって昨日帰ろうとしたらダグラスが離してくれなかったんじゃない・・・ふふふ、いいこと聞い
ちゃった♪」
 ベッドからとびおりたダグラスはベッドの中のエルフィールの笑顔の真相に気づかない。
「お、俺なにか言ったか!?」
「同じこと言ってくれたら教えてあげるよ」
 ずっと笑ってるエルフィールを見て、ダグラスは最初は気になったものの、それよりもエルフィ
ールがそばにいてくれたことがなにより嬉しかった。ご機嫌なエルフィールを見て、自分も気分
が良くなる。
「もう風邪治ったよね。ごはん作るから待っててね」
「あ、ああ・・・頼む」
 それからダグラスは自分がなにを言ったかしばらく悩むことになったが、エルフィールがご機
嫌ということはとりあえず変なことは言っていないだろうと思う。
 俺・・・なに言ったんだろな?


「ダグラス?」
 食事の後片付けを終えたエルフィールがダグラスが鎧を着ているのに気づいた。
「仕事、行くの?」
「ああ。そう休んでもいられねぇしな。お前のおかげで治ったし」
「でも・・・」
 もう一日でも休んでほしい。薬は効力が高いから、治る自信はあったし、現にダグラスはいつ
もの元気を取り戻していたけれど、やはり病み上がりというのは心配だった。
「今日は門番の仕事しかねぇから大丈夫だって。俺もう行くけど、カギかけてあとで持ってきてく
れるか?」
「あ、うん。わかった」
 そんな会話をしてふと同棲しているような気分になってエルフィールは顔を赤くした。それはダ
グラスも同じようで、エルフィールからは背中しか見えないが、その顔は明らかに赤く染まって
いた。
「じ、じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
 そう言いながらますます照れる二人であった。

 でも。

 いつかこうなれたらいいな・・・と互いに思ったことを二人は知らない。





  素晴らしさのあまり卒倒したので病院行き      蘇生ぴかぴか(新しい)

女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理