花火と約束と  

900HITのCIMAさんのリクエスト。
ダグエリで甘々♪ということだったんですが、ど、どうでしょう(^^;)
甘くないかもしれないです。いや、甘くない・・・うう(泣)
修行してきます。←どこへ?内容としてはかなり季節外れの夏祭り。
どうした私。二人はすでに恋人になっているという設定。うむ。

     


どうして太鼓の音や笛の音が聞こえてくると、人々は踊りだしたくなってしまうのだろう。人間の
持って生まれた本能なのか。それとも……

ここに、一人の少女がいる。

名前をエルフィール。 言わずと知れた入学試験最下位の者……である。
それでも何とか努力し、マイスターランクまで進むことができた。奇跡である。
やる気はあるのだが、きっと要領が悪いのであろう。いつも先生に怒られてばかりだった。
しかし、今日は年に一度の『夏祭り』。
この日だけは休んでもよろしいと、言われたのだった。

「ねえアイゼル。一緒に行こうよ♪」

エリーはなんだか嬉しくなって、すっかり仲良くなったアイゼルを誘ってみた。が。

「……わたしはもう先客がいるから。ゴメンね」
「…………え」
まさか断られると思ってなかった……なんて言うと厚かましいかもしれないが。
アイゼルは両手を合わしてエリーにペコと頭を軽く下げると、アカデミーの入り口の方に走って
行った。

先客って……
とエリーが入り口を見ると、
……なるほど。
そこにはノルディスがいた。

−−―――やっぱ友情よりも愛かなあ―――――

と。そんなことを考えている矢先だった。

すっかり日も落ちかけてきたザールブルグに、囃子の音が聞こえてくる。
いよいよ本格的なお祭りが始まる、という合図だ。

「……一人で行こうかな」

ちょっと空しいが、だれも誘う相手がいない。
いたとしても、もう手遅れっぽいし。
……誘いにくいっていう人もいるし。

アカデミーを出て、少し中央広場の方に行けば、屋台がズラリとならんでいる。

タコ焼き……お好み焼き……焼きそば……リンゴ飴……金魚すくい……わたがし。
数えればきりがない。
お店の種類がかぶっているところもある。でも、ザールブルグの人たちは競争心がないのか、
たとえ、通りを挟んだ目の前に自分と同じ系列の店舗が出ていたとしても、お互いにあっちも
美味しいよ〜なんて言い合ったりしてる。

耳に笛や歌が聞こえ、身体に太鼓の音を感じる。
前身で誰もが感じることのできる、この『夏祭り』。

たとえどんなに時が経っても……

「嫌いにはなれないよね」

エリーはそう、思うのであった。
そして、ふと立ち止まって目についたのが。

「あ」

子供たちが多く集まっている。
その透き間から見えるモノは……

「金魚すくいだあっ」

エリーは思わずかけよった。
すると。
「あ、職人どおりの爆発おねーちゃんだあー」

振り向いた子供にそう言われてエリーはギクとする。
爆発……って。

「こんにちはー……金魚、とれた?」

なんとか笑顔で対応。

「うん。見て見て!」
子供がエリーの方に向き直り、右手にもっていたビニール袋を顔のところまで持ち上げた。
「ほら、いーち。にーい。さん!」
「うわあ……三匹も取れたんだあ」

エリーは少し考えて。
(確か使ってないビーカーがあったよね。一匹くらいなら……)

「おじさーん♪一回やりますー」
「はいよっ」
「ん」

その返事の主は。

「うわっ、武器屋の……」
「ん?なんだなんだ」
「あの、武器屋の……ですよね?」
しばらく間を置いて。
「……おおお!お前さんか。」
「こんにちはー…金魚すくいの店、出してたんですか」
すると、武器屋のオヤジはニカと笑って。
「そうそう。コレがまた得意なんだよなーハッハッハッ」
「……」

エリーはそうしてオヤジさんからトレイと薄い紙の張ってあるヤツ(?)を受け取った。

「まあ……一匹くらいどうにかなるかなあ」
そう思っていたのだが。

「……」
「え、ええと。この辺かなあー……あっ、」
「……おっと……!」
「うーん、あ、浮いてきた……ここを……ああ、ダメだあ」
「……」
「よしっ、これ!……いけっ」
「おう!のったのった、いけ」
「ええーいっ」

ぼちゃン

「……」

金魚は脱走した。

「あうー……破れちゃったよおぉぉ」

エリーはガックリと肩を落としながら立ち上がった。

「ま、まあ。また今度チャレンジしてくれよ、なっ」
「はいぃ〜」

子供でも3匹とれるのにぃぃぃ。
ちょっと自分の運動神経の無さに悲しくなってしまったエリーであった。

「帰ろうかな……」

つぶやいた瞬間。
「お前なにやってんだ?」

突然背後から声がして、振り返って見れば。

「ダグラス……」

夏祭りだというのに、いつもの鎧をつけて何だかちょっと浮いて見えるその人。

「さっきから見てたんだけどよ。本当にヘタクソだな」
「み、見てたの!?ナニよお……」
「そうそう。みんな笑ってたしな。」
「うるさい〜っ。私だって本気じゃ無かったし……」

本当は本気だったけど。

「い、いいじゃないっ、ダグラスには関係ないでしょッ」

まさか知人に見られているとは思っていなかったので、わたわたするエリー。
特にダグラスには見られたくなかった。

「もう、私、帰るんだからっ」
「……あるんだよ」
「へ?」
「俺にも関係あんの!」

ダグラスは少し顔を赤らめながらそう言うと、早歩きで金魚すくいの屋台に向かった。

「一回」
「お?おー、今度はお前さんか。はいよ」
「……」

ダグラスは金魚すくいのヤツを持つと、超高速で金魚をとり始めた。
そして、9匹ほど取りおわった時、にわかに立ち上がって純粋に感動しているエリーの方にズ
ンズンと歩み寄った。

「な、なにっ?」
「……選べ」
ダグラスは金魚の入ったトレイをエリーの目の前に突き付けた。
「へ」
聞こえたのかそうでないのか、エリーがトボけた返事をすると。

「だからっ、この中から好きな金魚……選べ」
「ダグラス」
「……あんだよ」
「顔、赤いけど……どしたの?」
すると、今まで横を向いていたダグラスが、さらに顔を赤くしてエリーの方を向いた。
「あ、……あついんだよっ!バカ///」

精一杯の一言だったのか。
エリーもようやくそれを悟って、トレイの中を静かにのぞき込んだ。

「あ……あのね、じゃあ」
エリーがそっと金魚をゆび指す。

「コレがいいかな……丸くて可愛い」
「……太ってるんじゃねえの?」
「な、なんてコト言うのよおおー。いいのっ、コレが好きなのっ」

ダグラスは、強い口調で言うエルフィールに少し押されながら言った。

「じゃあコレでいいな」
「うん」

そして、ダグラスは武器屋のオヤジに、トレイからエリーが選んだ金魚をとってもらい、ビニー
ル袋に入れてエリーのほうに走ってきた。

「ほれ」
無愛想にビニール袋を渡すダグラス。
だがその表情はどこか優しげであった。

「ありがとう〜。うわあ、可愛い」
素直に喜ぶエリーを見てダグラスは少し照れ臭そうに言った。

「なあ、お前……このまま帰るのか?」
「え?」

さっきと違う口調に、金魚から目を離してダグラスを見るエリー。
ふと、ダグラスのその瞳と目が合い、何だかドキドキしてそらした。

「う……うん…」
「……帰ることないんじゃねえの?」
「どうして…?」
「…別に……ほら、その。まだ…花火見てねえし」
「花火?」

エリーは一瞬、顔を歪めた。
「ダグラスに花火。なんか似合わないよ……?」
「うっ、うるっせーなあ、とにかくお前はココにいればいいんだよっ」

ダグラスはそう言って、無理やりエリーの肩を抱き、自分の方に寄せた。

−−−−−ドクン……
エリーの胸の奥から、何かが込み上げてくる。

「……っだ。」
「ほれ!……早くしないと夏祭り……おわっちまうぞ!///」

何か言いかけたエリーを遮って、ダグラスはするりと肩から手を放す。
一瞬だけ涼しい風が二人の頬をなでた。

「……」

なんだか……
こういうの、悪くないよね。


二人はそれから色々な屋台をまわった。

食べたり
遊んだり
踊ってみたり。

どうして太鼓の音や笛の音が聞こえてくると、人々は踊りだしたくなってしまうのだろう。人間の
持って生まれた本能なのか。それとも……

それとも……この人が ダグラスが側にいるから?

楽しい時間が早く過ぎるってホント。
二人が端から端まで楽しんだとき、屋台はもう片付けを始めていた。
その様子をぼうっと妖精の樹にもたれて座りながら見ている。

「お、さっきはどうもな。来年はうまくやれよ」

武器屋のオヤジさんが荷物を引きながら二人の前を通り過ぎていった。


「すっかり日も暮れたな」
「うん」

楽しさですっかり忘れていたが……。
エリーはさっきの事を思い出していた。

『お前はココにいればいいんだよ』

沈黙が流れるたび、その言葉を胸に響かせてしまう。
思えばあれは一年前のことだったか。

ダグラスが武闘大会で優勝し、エリーはその日に告白を受けた。

そんなこと、考えてもいなかったのに……
いつのまにか私もダグラスを好きになっていた。
だから付き合うという返事を出した。

だけど、日々の忙しさのあまり、会える日は少なかった。
二人の間に少しの隙間があった。

……だから今日、お祭りに誘えなかった

でも今は・・・あのころに戻ったみたいでドキドキする。
隣にダグラスがいる。肩を並べている。
あの真っすぐな瞳で夜の空を見ている。
ちょっとだけお祭りの余韻が残ったザールブルグに、今、二人でいる。
(……やっぱり好きなのかなあ)

エリーはそんなことを考えながらダグラスの横顔を見ていた。

「……あのな」
「え」
「そ、そんなに俺の顔がおもしろいのか……?」
「えっ///」

エリーは恥ずかしくなって下を向いた。
「ち、ちがうよ……」
「……そ、そうか」

二人に長い沈黙が訪れる。
こんなとき、何を話せばよいのだろう。

星がとてもきれいに瞬き、月は満月で……こんなに良い夜なのに。
久しぶりに会った二人には、ただもやのようなものが流れるだけだった。

と、その沈黙を破ったのはダグラスだった。

「あのさ、……」
「ひゃいっ!?」

突然話しかけられてエリーは身体をビクっとさせた。
「……な、なんだよその反応は」
少し怒り口調で言うダグラス。
「ち、違うよお、あの、ネ、ネズミが現れて」
「あーわかったわかった」

苦しい言い訳を見破って、ダグラスはうなづいた。
「もっとマシなウソつけって」
「……ご、ごめん……だって。突然、話しかけるから」
「突然じゃなきゃいつ言えばいいんだ?」
「……そ。それは……」

逃げ場の無いエリーに、ダグラスはひとつため息をついた。
そして、なんだか小さく縮こまってしまったエリーを、横から軽く抱き締めた。

−−−−あっ……

「こうしてると落ち着くんだ。…いいだろ?」
「……うん」

エリーも身体をダグラスに向けて、その胸にそっと手を当てる。

とうに鎧の外されたダグラスの身体は、とても暖かく、
今日みたいに少し冷える夜風から私を包んでくれる。

「ごめんな」
「……何?」
「おまえの誕生日、俺……急に仕事入っちゃっただろ?……その、一緒に出掛ける約束してた
のにな」
「ううん、そんなコト気にして無い」
その答えにダグラスはガクと肩を落とした。
「……ちょ、ちょっとは気にしろよ……俺、いつ謝ろうか悩んでたんだぜ」
「えっ……だって……だって仕方ないこと、じゃない……」

ダグラスは聖騎士団の中でも1・2を争うくらいの騎士。
忙しいのも、国王やエンデルク様に気に入られているのもわかるもの。
その人を私だけが独り占めする訳にはいかない。

わかってるよ。子供じゃないもん。

だって、もう大人になったんだよ。私−−−−

なのにどうして……?どうしてなの

どこからくるのか。
突然込み上げる涙をこらえきれなくなって、ダグラスにしがみつく。
「でも本当は……」
「……ん」
「さみしかったよ……会いたかったよお……」
「エリー…」
ダグラスは、泣きじゃくるエリーを強く抱きしめる。
(本当にこいつは…… )
「俺の前では強がるなって前に言っただろうが……意地っ張り」
「う、うるさいなぁ………グス」
「……でも、今日、こうして会えてよかった」
「うん。ねえ……また忙しくなっちゃうのかな……」

ダグラスは少し考えて言う。

「さあ。お前はアカデミー卒業だけど、俺はどうだろうな」
「……」
「さらに忙しくなったりしてな……遠征とか」
その言葉に、エリーは胸にうずめていた顔をガバッと持ち上げてダグラスに言う。
「え、遠征!?」
「……そう」
「遠征しちゃうの!」
「……へ」
「どっか遠くに行っちゃうの?」
「……あの、だから」
「いやだよ!そんなの。遠くに行くなんて……」

明らかに勘違いしてあたふたしているエリーに、ダグラスは考えた。
(コイツ、口じゃ何言ってもきかなそうだな…)

「どこ……カスターニェ?ケントニス?全然知らない土地?」

そうして、暴れている(?)エリーの肩を両手でガッとつかみ、その唇に軽いキスをした。
突然の出来事に、目を丸くしておどろくエリー。
ダグラスは自分の唇をエリーから離して、ふうとため息をつく。

「だから、例えばの話。」
「……」
「わかったか?」
「……あ、う、うん」

(……やれやれ)

「そうだな……卒業後だったら……」
「え?」
「もし俺が遠征になったとしても、お前が卒業したらその、……一緒に行けるだろ?」
「……あ……」
エリーの顔にぱっと明るい光が差す。
「そうだよね、一緒に行けるよね」
「……そのときは、まあ、……宜しくな」
「う、うん!」
「よし。」
二人は笑いながら顔を見合わせた。

「じゃあこれは約束の印ね」
「え?」
そう言うと、今度はエリーからダグラスに口づけをした。

「約束だからね」
「おう……///」

まさか返されるとは思ってもいなかったので、少し驚き気味のダグラス君f(^_^)


そして、夜空に大きな花火がひとつ、上がった。
                            

                                   fin






女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理