終・あなたへ贈る永遠の想い





そして去年と全く同じ対戦が始まった。

フェズ対ダグラス  

観客は皆フェズの力を知っている。相手の攻撃から逃げ続け、腕や足の疲労がピークに達し
たころをみはからって一撃で決める。その戦略を単純だと知って分かっていながらもついつい
夢中になって剣を振り回してしまう  。

「ダグラス・・・」
小さな声でささやくように言ったエルフィールの言葉はアイゼルにもノルディスにも聞こえない。
ダグラスにだけささやく希望の声。

「また私のところに戻ってきて  お願い」

願いはそれだけ。エルフィールの耳に響くのは剣と剣の重なる凶器の音だけ。まわりの観客の
叫び声もアイゼルの興奮した声も何も聞こえない。


『勝たなくてもいい、負けてもいいから』
『私、ダグラスの事が・・・』
ダグラスの頭の中ではさっきからその声ばかりが脳に響いていた。
(あのときエルフィールは何を言いかけた・・・?)

「隊長、絶対負けませんよッ」

フェズがそんな表情をしてこちらに向かってくる。動きが素早い。去年よりもはるかにレベルア
ップしている。フェズの剣が見えない!
  
だめだ、ダグラス。思い出すんだ。エンデルク隊長がなぜ自分に隊長の座を譲ってくれた
か・・・。俺は知ってる。今ならその答えを見つけられる。エルフィール・・・もう泣かせたくない。

もう離したくはない。もう  迷っている暇は無い。

「フェズ、この剣に全てを誓っておまえを負かす!」
フフ、と笑ったフェズは振りかぶった自分の剣を見て逃げる態勢をとった。
が、しかし   

シュッッッ

突然フェズの目の前からいたはずにダグラスが消えた。
「ど、どこだッ」
フェズはかなり狼狽して剣を構えている。
「隊長ッ、どこですか 」

そういったその刹那  

「ここだあっ!」
「!」

決着は  ついていた。

  これは幻、幻覚、それとも・・・夢?
ううん、これは現実・・・

足に重傷を負ったフェズはそのまま医療室へと運ばれていった。苦しむ表情も見せずに。
観客は大声で勝利の喜びを叫んでいた。
ダグラスの喜びの声とともに。  



それからすぐに酒場でパーティーが開かれることになった。あの狭い酒場はあっと言う間に人
でいっぱいになり・・・ロマージュさんがうれしそうに踊っていた。
 そんな中、私とダグラスは人の目をぬすんでこっそりと酒場を抜け出した。

二人は大きな草っぱらに腰を下ろす。
「わあ、今日は満月なんだあ」
「みたいだな、お前の帽子とよく似てるよ」
「似てないよお・・・」
ぷーっと膨れた顔をしたエルフィールを横目で見ながらダグラスは言っ
た。

「なあ、エルフィール・・・あの武闘大会の時に、何か言いかけたよな。あれ、なんて言おうとした
んだ?」
「なんか・・・って、ああアレかあ。アレはね・・・」

「ダグラスのことが好き」
やっと気づけた。この想いに・・・・

エルフィールはダグラスの耳元でその言葉をそっとささやいた。聞いた瞬間二人は顔を見合わ
せてニッコリと笑う。

「同じだな、俺と」
「ふふふっ」
その日、満月の夜に流れ星が降った。いつもは月の光や町の光でよく見えないと言われてい
た流れ星。

だけど今日だけは―――― 
二人の頭の上をいくつもの星たちが流れていった。


一方  
「えっ、終わってしまったのか 」
シグザール城の一室で低い叫び声が上がった。
「あの・・・一体いつ出発したんですか・・・?」
「・・・まあ、それはいい。で、どうだったんだ?」
するとダグラスはふふん、と笑ってみせた。
「もちろん、俺の勝利に決まってるじゃないですか!」

久しぶりに戻ってきたのはいいものの、肝心の武闘大会を見損なったのはエンデルクだった。
「いや、まさか間に合わなかったとは・・後輩の勇姿を見逃したではないか・・・」
随分と悔やんでいる様子のエンデルクを見てダグラスとエルフィールはほほ笑んだ。
「エンデルク様、その後はどうなんですか?」
「うむ。戦争は止められたものの、いつ再発するかわからない。まだとどまることになりそう
だ。」
「そうですか・・・」

ダグラスが少しうつむく。
そんな様子を見て、エンデルクは不適に笑ってみせた。
「なに、お前ら二人いればザールブルグの未来も安泰だろう」
「はい。って・・・ふ、二人でですか!?」
「なにを驚いている」
エンデルクの口調は相変わらず淡々としているが、表情は笑顔だった。
「エルフィールはザールブルグの立派な錬金術士だろう」
「えっ、あ。錬金術士」
「・・・ふ。なにを考えていたのだ?」
「い、いやっ違いますっ」
一生懸命はぐらかそうとしたが、とうのエンデルクにはすべてお見通しのようだった。


その後・・・


エルフィールは3月に『名誉賞授与式』を終え、今度は正真正銘自分の店をもった。

『あの工房、あなたにあげようと思ってたのに・・・』
そう言うイングリド先生の言葉にエルフィールは首を振った。

『いいんです。あの工房は、また私みたいな人が来たときのために残しておいてあげたいんで
す。』

するとイングリド先生はほほ笑んだ。

『そう、あなたがそう言うのならば仕方ないわね。何と言ってもあの工房からは偉大な錬金術士
が2人、出たところですからね。いいでしょう、今年の入学試験で 番なんてとんでもない成績を
取った人にあの工房を貸しましょう』

エルフィールはその言葉に苦笑いで答えた。
『お願いします・・・』
『ところで、新しい店はどんなところなの?』
『はい、同じ職人通りであの工房よりちょっと小さめのお店です』
『小さめでいいのかしら?まあ大きすぎてもあなたは大変ね。すぐ汚すから』
『はは・・・いいんです。2人で住むには十分な大きさですから』
『そう・・・二人で、ね』

エルフィールとダグラスがした決意・・・それはともに人生を歩いて行くこと。ダグラスが言った言
葉はそういう意味なのだろう。
 
『俺が一生お前を守り続けてみせる』

この人と一緒に未来を生き、永遠を生きよう。






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